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庭師と駒

ささやかな愛を伝えたいだけのペン、インクは紫で

過去の#短文 まとめ①

こんばんは、みなしろです。

Twitterのほうで時々やっている小説っぽい呟き#短文 ですが、そろそろ過去のものが溜まってきたのでこのあたりでまとめておこうと思います。

Twitterに流しっぱなしだと見返しにくいといろんな方から言われているので時々まとめないとですね……。

一番最初の頃に書いたやつも別のところで一度まとめているんですけど、あそこもうあんまり使ってないので、とりあえずこっちに移植しておく。

①は2016年分です。

外から新聞配達するバイクの音が聞こえた。窓が開いていた。(10/16 5:46)

 

眠りにつくまえにその日一番聞いた人間の声が脳味噌で何度も繰り返される。それがあなたの声であるときに俺は幸せを感じる。今日はDVDを見たから。あなたが好きだということだ。空想と現実が繋がるのは意識が遠退くときだけで、俺はいつもおやすみを言い損ねた。(10/16 5:52)

 

二人の祖母が亡くなった時俺は必死になって火葬場のかたちと骨の焼ける匂いを記憶しようとしていた。人が死んだときという名前のファイルに綴じて記録しておくためだった。銀色の巨大な箱がするすると吸い込まれていく様はパンを焼くときみたいだと思った。けれども人並みに泣いた。
どんなに彼らを愛しても俺は絶対にその骨の匂いを嗅ぐことはなくて、それはすごく良いことだな、と思う。技術が発達して身体の不老不死の時代がやってきたとしたら、特にきみのほうは、いくらでも身体をすげ替えて生き続けるだろう。心を病んで死を選択する人々の中できみが踊っている。 (10/16 19:37)

 

三日学校に行って三日働いて一日休むと一週間がおわる暮らし (10/16 21:18)

 

寝不足でずっとえづいている彼の高くてでかい車を運転していた。「このまま東北とか行きたいすね」「なに馬鹿なこと言ってんの。次の次左ね」幹線道路は片側三車線で俺は若葉マークがとれたばかりのドライバーだ。手が汗をかいていてハンドルを握り直す。あんた自分で運転すりゃいいのに。 (10/16 21:39)

 

次のためにあれこれ考え事をしていたらつい禁忌、と口に出た。「えっ? KinKi Kids?」天井を仰ぐ俺を覗きこんで言う。目がでかい。うんまあ、なんかもう、それでいいや。 「恋っは~じぇっとこおすた~」「なにどしたの」「いや別に」「ごはんできたよ」「うん。食べましょう」(10/16 21:57)

 

雨の音は外界を意識させる(10/16 22:01)

 

体感は14歳の汚れたベッドに立ち返る。マットレスに敷かれた夏場用のメッシュシートが肌に跡をつけた。あの部屋はもう引き払ったけれど君のことを覚えている。君は山間の土地に移って結婚したんだろう。歳上だった君のことが、僕の皮膜を玉葱みたいに剥がした一番真ん中にあった。(10/17 15:16)

 

突き付けられたナイフがにせものかほんものか判別がつかないので俺はとりあえず怯えてみる。子供が使う先の丸いハサミでもたぶん、どうにか人の皮膚を破くことはできて、だから問題はその手にあつかわれているということなのだ。「ちょっと待ってやめてください」『模造刀は案外切れる』 (10/17 16:29)

 

例えばおれが、きみの四肢が不自由になるようななにかを施したりきみのまるい頭部に鹿の角を生やして白ませることは、おれが、そうでもしないとなにもできない、という、屋根裏の鼠より脆弱な精神と肉体の持ち主であることの証明に他ならず、けれどもそれを理解する程度にひとであるおれは、
「……う゛、え」
「堪えろそこで吐いたら殺す」
飲み込んだ酸で喉が焼ける。吐く息も吸う空気も変な臭いがして、その隙間で、パーカーの襟首から柔軟剤が香った。 (10/17 9:55)

 

悲しむばかりがことばだろうか (10/18 16:14)

 

気が付くといつも人のいないところまで来ている(10/18 23:17)

 

きみが伸びてきた髪を耳にかけて「うん?」と小首をかしげるので、何を聞こうとしていたのかすっかり忘れた。
「あ……わ、忘れた、なんだっけ」
「えっ? 思い出してよ!」
「あ~えーとなんだ、マジで忘れちった」「頑張って頑張って! 絞り出して!」
ぐっとガッツポーズをするために握られた拳がか細くて綺麗だとか、もうそんなことを考えていた。(10/24 1:53)

 

愛しても愛してもぼくのため(10/25 15:52)

 

わずかな頭痛に添い寝される(10/26 1:42)

 

皆がそれぞれの呪いを刻みながら一年が過ぎていく (10/27 22:36)

 

「君が死ぬ夢を見て、起きたら泣いていたんだ」と言ったあの子のこと (10/28 0:50)

 

身体が浮いて浮いて天井にめり込むくらい浮いて、見下ろした机の配列がパズルゲームアプリの盤面に似ていた。教室は休み時間に入りざわついている。歩く坊主頭を右にスワイプすると、くるりと向きを変えた。以来俺はずっと教室の天井に貼り付いている。出席簿からは名前が消えたようだった。 (10/30 23:55)

 

「せんせい、あなたね、ほんとうはわたしのことなんてちっとも好きじゃないのよ」 (10/30 23:59)

 

RCA端子と電源コード、引き抜いてくれ、俺の頭にはファミコンほどの処理能力もないからそんなもんだ、なあ簡単だろうあんたになら俺にすらわからない電源ボタンを探り当てて真っ暗にするくらい赤子の手を捻るでもないだろう、けどあんたは俺を殺してくれないな、あんたはどこにもいないから(10/31 1:40)

□□

ここから #リプライできたお題で短文書く で書いたもの


キュービックジルコニアというダイアモンド紛いの石がシルバーリングにくっついた、安い指輪しかあげられなかった。いつか本物を渡すから、などという嘘もつけないでいた。黒ずみやすい指輪を彼女はまめに磨く。銀を光にかざす仕草が僕の無力と、君の清廉を浮かび上がらせた。(お題『宝石』 10/17 18:44)

 

はくちょう座ってただの十字じゃない?」君の眼差しの中に在る。(お題『89番目の星座』 10/17 19:31)

 

もっと前、「行かないっ」ですよねぇ。一定の間隔を保ってカップルが窓辺に貼り付いている。俺は人垣の背後でベンチに座って、東京の光を細切れに感じた。喫煙所に行ったきり戻らない画力より食い気のひとと高所恐怖症の彼を背負って来るには、夜遅い展望台はあんまりロマンチックすぎていた。(お題『キャロットタワー』10/17 21:29)

 

「あ」「ん?」「これスイートバジルだ。パセリと間違えた」「コーンスープ?」「うん。なんか味違うと思ったら……」「美味しいよ? 普通に」「美味しくなくはない」「別に良いんじゃない」「まあ緑だからいいのか……?」「おんなじだよ。こういうのは見映えが大事なんだよ」(お題『彩り』10/17 21:41)

 

「……どしたのそれ」
「粗大ゴミに捨ててあった」
四畳半の中央で複雑に煌めくそれは、先の停電で煙を噴いた電灯の代替えになっていた。彼は細かい光の粒を白いほっぺたに貼り付けてカップ麺を啜っている。小さなちゃぶ台に買ってきた煙草を乗せると、ありがと、と笑った。 ポケットから取り出された小銭は突っ返した。
「いいよいらない」
「マジで? 悪ィね」
「私、小さいときシャンデリアのある家に住むのが夢だった」
彼が口をもごもごと動かしながら、首を上に向ける。少し考えて私に向き直った。
「ラブホみたいじゃない?」 (お題『シャンデリア』10/18 13:07)

 

□□ここまで□□


君に出会うまでの俺を殺してきたよ
「愛してる、って、言ってくれたらいいだけなのに」(11/3 15:33)

 

「伝説になるなら」

平屋立ちののっぺりした住宅ばかりが並ぶ集落で、中学の屋上は山以外の数少ない高台だった。

「死ぬしかないんやろなぁ、多分」

俺達はそこに通う全生徒生徒三十名のうちの二人、男子だけで言うと十のうちの二だ。

「お前オザキが四十になっても五十になっても生きとったら今になってもあんな持て囃されとると思う?」

「知らんよ。急になんや」

手っ取り早く名を上げたいという数学のプリントのざら紙より薄っぺらな野望をこいつはたまに口にすることがあった。もちろん本気ではないだろう。

「あーやっぱいかんわ。死ぬの怖い」

「お前が死んだらあの、あれ、カエルの世話誰がするん」

「ベルツノガエルな」

「お前の母さんあれだけは触りきらんのやろ」

そうやなあと呟いて空を見上げる。丁度太陽が雲を割ってまぶしそうに目を細めた。

「俺が今死んでも新聞にも載らんな」

「ニュースにはなるやろ」

でもそれはお前としてではなくて、学校から飛び降りるなりして死んだ一人の男子中学生の話として広まるのだ。俺のところにもインタビュアーが来るだろう。親しかった同級生は、とテロップが打たれる。画面には首から下の俺が映る。

「……いややなぁ」

「何?」

 「次の国語テストあるやろ」

「うわっマジで? 完璧忘れとったわ」

「あーあ居残りやな」(11/16 16:32)

 

あんたの白々しい嘘をどうせなら色とりどりに塗りこめてやろう(11/25 21:31)

 

「お疲れ」「うわ来た」「先生診てください」「今日は骨イッたりしてないだろうな」「たぶん大丈夫」「たぶんじゃねえよ。お前どんだけ酷くても顔に出ないからわかんねえんだよ」「別に家でやってもよかったんだけど顔見たかったし、右手こんなんだからさ」「診察室以外で会いに来いよ……」「……俺がいなくなったらどうするつもりなんだよ」「このまま親父さんの跡を継ぐんだろ。いなくなる予定なんかあったかな」「そうじゃなくてさあ」「……いなくなったら、別の病院に行くよ。ちゃんと医療費を払って」「てめえいつまでもタダにしてもらえると思うなよ」(『傷の多い男』12/12 9:15)